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三樂だよりmagazine

「江之浦測候所」

コラム 2020.03.16

小田原文化財団 江之浦測候所

まずは、入場の際、配布されるパンフレットの小田原文化財団 ファウンダー杉本博司氏の解説を転記させていただきます。

「小田原文化財団 江之浦測候所」

構想:杉本博司氏
基本設計・デザイン監修:新素材研究所
実施設計・監理:榊田倫之建築設計事務所
施工:鹿島建設
住所:神奈川県小田原市江之浦362番地1

概説

アートは人類の精神史上において、その時代時代の人間の意識の最先端を提示し続けてきた。

アートは先ず人間の意識の誕生をその洞窟壁画で祝福した。

やがてアートは宗教に神の姿を啓示し、王達にはその権威の象徴を装飾した。

今、時代は成長の臨界点に至り、アートはその表現すべき対象を見失ってしまった。

私達に出来る事、それはもう一度人類意識の発生現場に立ち戻って、意識のよってたつ由来を反芻してみる事ではないだろうか。

小田原文化財団「江之浦測候所」はそのような意識のもとに設計された。

悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。

そしてそれがアートの起源でもあった。

新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。

天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。


 

この概説にも触れず、2018年に発刊された「庭NIWA 230」の表紙を飾り江之浦測候所を知る事になったのですが、深く掘り下げず、測候所という由来さえ気に留めていませんでした。
しかし、とても気になっていてずっと行ってみたかった場所です。

悠久の歴史と天文には滅法疎いのですが、冬至、夏至、春分、秋分と季節を表す言葉にすると身近に感じます。この二至二分と立春・立夏・立秋・立冬の四立を併せて八節。
季節の節目、二十四節気七十二候に通じる太陽と我が星地球との関係性は、全ての事象の源である事に間違いはありません。


見学して初めて何故惹かれたかが判ります。


自然の摂理に則った設計に、それぞれ由来の素材を使用して、そして手を加え創られた建築・造園の空間は、様々な角度、見方の解釈を勝手にし、わからないものは解らず、借景代わりの相模湾と包み込むような三浦、房総、伊豆半島、そして大島を取り込んで絵として取り込んで満足できます。


私は2月後半に行きましたが、それぞれの季節にそれぞれの発見が無限にありそうで、また機会を作って出かけたいと思います。


皆様も先ずは現地に赴かれることをお勧めします。

 

 

「夏至光遥拝100メートルギャラリー」
海抜100M地点に100Mの長さのギャラリー。

大谷石の内外壁とガラス面の構造体。
大谷石の各々表情だけでも飽きないくらいの数が使われています。
通路の磁器タイルは落ち着いた舗装材で、玉石の両側列から少し浮いて直線がくっきり通ります。

 

待合棟のテーブル天板は樹齢千年を超える屋久杉。
こちらでご案内の説明を受けます。

入り口の敷石は、京都市電の軌道敷石。
濡れるとまた一味違った風情を醸し出しそうな。

 

風景が映り込む100Mギャラリーガラス面側。
葉を落としているモミジが秋になれば、鮮明な紅葉を描くでしょう。

 

シンメトリーを楽しんでみました。

シンプルで頑丈な鉄扉の面は、人の顔ように構成があります。

 

100Mギャラリーの内側。
杉本氏の作品が展示されています。色違いの大谷石がアクセントです。
対照的に単調な洗い出しの床。

 

三角形の苔庭に小松石の景石。
小松石は地元真鶴半島が産地の「輝石安山岩」です。昔(奈良時代)、「伊豆石」「相州石」と呼ばれていました。
「西の庵治石」「東の本小松石」(硬質、耐久性、耐火性に優れ粘り気がある)と呼ばれ、城の礎石、偉人のお墓に使用される価値ある石材です。

 

100Mギャラリーのコンクリート基礎部は、大叩きの仕上げになっています。圧巻の意匠です。

寄石敷きの長い敷石。隈笹との相性がいい。

 

「円形石舞台」
円の中心に大きな伽藍石、放射状になるように加工された敷石。
この位置から70mの「冬至光遥拝隧道」に朝日が差し込む。想像はできない。

「冬至光遥拝隧道」の入り口に相応しい3個の大きな石。
この隧道の材質はコールテン・スチール?

 

大谷石の壁面と磁器タイルの床面一枚一枚の表情が全体となって、更に空と海を取り込んでいるこの場所は、とても気持ちが良いです。しゃがんでみました。

 

「古代ローマ円形劇場移し観客席」を潜り延びる「冬至光遥拝隧道」が相模湾に突き出す。
※「古代ローマ円形劇場移し観客席」の観客席はイタリア、ラツィオ州のフィレント古代ローマ円形劇場跡を実測し再現。

「冬至光遥拝隧道」の脇出口には、これまでと違う雰囲気の階段があります。
少し驚きました。蹴込みの加工がされた古い石灰岩の階段は、フランス旧家で使われていたものだそうです。
石の表面の経年変化は歴史を刻みつつ、今ここに辿り着いたようです。

 

「古代ローマ円形劇場移し観客席」上段から光学硝子舞台を見る。
とても斬新な舞台。

「冬至光遥拝隧道」の天井に上がりました。
※止め石手前の位置から相模湾を望みます。

 

蕗の薹

「根府川石の浮橋」
平らで浮かせて厚みが強調された浮橋。
『石を伏せる工法』の顕著な例だそうです。

 

能舞台を基本寸法とした「石舞台」

 

敷石

「野点(のだて)席」
※「野点」とは屋外で茶または抹茶をいれて楽しむ茶会のこと

 

「光学硝子舞台」の基礎構造

 

春の青空に突き出す「冬至光遥拝隧道」

 

この風景が未来に残る。
不変の冬至と夏至の日の出位置を指す建築物。

「夏至光遥拝100メートルギャラリー」を下から望む。

 

「石造鳥居」
茶室「雨聴天」からこの石造鳥居の直線状に春分、秋分の日の出を望むことができる。
または、茶室の躙口から床に春分、秋分の陽光が差し込むという表現の方がいいだろうか。

 

茶室「雨聴天」の床の間掛け軸「日々是口実」が「クスッ」と笑いを誘う。

旧奈良屋門の版築の土塀

 

今日の景色

 

限りある生命の巨木

「数理模型0010」負の定曲率回転面
最先端5㎜の先の無限点を夢想する…

 

「被曝宝塔塔身」
広島の爆心地近くの石造宝篋印塔の被曝し損傷した塔身。
竹林が鎮魂を包み込んでいるよう。

「亀石」
亀は北東の向きに据えられ、鬼門の方角となる首都圏を向く。
パンフレットにはこう記されています。
“文明が滅びた後、亀の頭が見据える先には、古に栄えた都があった方角を指し示している”と

 

大きな石の石橋
奥の窪んだ石に『大官大寺の瓦』が置かれています。
※『大官大寺の瓦』とは、大安寺の前身寺である藤原京の大官大寺で使用されていた瓦で、発掘調査により出土したものです。

 

道路から車での駐車場入り口誘導看板

 

 

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文章・写真: 三樂編集部